中国で模倣品が多いワケ(その2:世界最強の製造力)

  

こんにちは、ちざたまごです。ついに令和元年が始まりましたね!

「これから時代が変わっていくと模倣品は無くなるか?」的なトークを他社の方と時々するのですが、残念ながら私は、楽して儲けたい人間の心があり続ける限り、模倣品が世の中から無くなることはないと考えています。

ただ、歴史を見ると、模倣品の製造地が日本→中国へとシフトしていったように、「模倣品はどこから来るのか?」、「どこで集中的に対策をすべきなのか?」という模倣品対策を進める上で、基本的な問いかけへの回答はこれから変わっていく可能性があります。

今後の動向を推測していく上でも、現時点で中国発の模倣品が多い理由を明らかにしておくことは役立つと思います。

さて、第1回 では、中国に模倣品が多い理由をお金とニーズの側面から考察し、

「普通の中国人、1人1人が使える金額は多くなくとも、12.5億人集まれば巨大なバイイングパワーになる。

 彼ら・彼女らのニーズの受け皿として、模倣品ビジネスが成立している。 」

とまとめていました。続く第2回では「製造力」という別の側面から考えてみたいと思います。

  

調べてみたら・・・世界一多すぎ!


まず、データから始めましょう。様々なメディアで日々「日本の製造業は衰退」とか、「中国は製造大国から製造強国へ!」的なニュースをやっていますが、実際中国の製造力はどの程度あるのでしょうか?「データブック オブ・ザ・ワールド 2019: 世界各国要覧と最新統計 」を元に、日本と中国の工業生産力を比較し、まとめてみました。

中国が日本を凌いでいるというのは予想通りだったのですが、日本の輸出額のNo.1を占める自動車で約3倍、かつては家電王国・日本の象徴だったテレビで約92倍という生産数の差がついているのは、結構衝撃でした。

さらにパソコンでは73、スマートフォンに至っては300の差があり、しかも表にまとめた主要工業製品の全てで、中国は生産量世界一となっています。

これを見て、「日本の製造業は中国に負けっぱなしじゃないか!」という意見もありますが、日本は工作機械・自動車・船舶竣工量で世界3位を維持し、研究費でも第3位の投資を続けていますので、日本が世界で無双していた20年前より相対的に地盤沈下しつつも、まあ何とか世界で善戦しているのではと思います。

どちらかといえば、中国が競争相手として強すぎるのです。

  

なぜ中国製品は世界で無双するのか?


では、なぜ中国はこれだけ生産力が強くなったのでしょうか?

第1に挙げられるのは、「自国に豊富な資源がある」ことです。表の下側に工業製品に欠かせない金属の生産量をまとめていますが、中国は銑鉄の生産量で日本の約10倍、世界の約60%を占めています。

アルミニウムに至っては、日本はどうやっても採算が合わないとして2014年に精錬産業から完全撤退しましたが、逆に中国は原料となるボーキサイトを産出でき、精錬に必要な電力も自国の石炭で賄えることよりここ20年で急激に生産量が増加し、今では世界一となっています。

参照:https://www.aluminum.or.jp/basic/worldindustry.html 日本アルミニウム協会 世界のアルミ産業

  

第2に、「世界の工場として働くうち、相当な技術力が身に付いた」ことです。そもそも、中国の製造業が発展したのは2001年11月のWTO加盟に象徴される、対外開放策を契機としたもので、安い労働力を求めて欧米各国や日本より企業がこぞって進出しました。

約14億という人口を持ち、賃金水準もそれほど高くない(特に20年前は!)中国は、組立加工のような労働集約型の産業で競争力があるのですが、最初から中国独自の高い技術力があった訳ではありません。

ただ、「世界の工場」となるにあたって先進国で要求される品質水準は高く、それを満たすために日本を始め各国から技術者・エンジニアが中国に渡り、懇切丁寧に生産方法を指導し、その上で大量の製品を発注しました。(そうしないと中国で量産体制を整えることは不可能だった訳ですから、仕方がありません)

「習うより慣れろ」と良く言いますが、中国は習うだけでなく、生産の現場というOJTで技術を磨き、量産の効率性を高めてきました。

さらに中国政府には、単に先進国の下請けをし続けるのではなく、技術を磨け、先進国と競争できるようにドンドン先端分野に投資しろという国策があり、研究費は米国に次いで世界2位となっています。

先進国から技術を吸収しただけでなく、それを生産の現場で使い続け、さらに研究開発の投資でブラッシュアップしていく体制があるのです。

第3に、一番大切な要因として、「中国製品は世界中にニーズがある」ことです。

まだ不良率や品質の部分では先進国に及ばないところはあるものの、多くの中国製品(特に独自ブランドを持っている中国メーカーのもの)はすでに「普通に使える」レベルに達している訳で、価格&機能のバランスを考えると中国製品はすでに先進国においてもベターチョイスです。

さらに先進国プライスの製品は買うことができないアジア・アフリカの一般層にとっては唯一無二の選択肢だったりします。

正直なところ、そのジャンルのブランドにそれほど興味がない場合、それほどその製品を使わない場合は、多くの消費者にとって「安さこそ正義」です。

例えば、2018年5月現在、Amazon.co.jpで顔認証&指紋機能付きの中国ブランド simフリースマートフォン(Android9.0)が約1万円で買えてしまいます・・。某リンゴマークのsimフリースマートフォンは一番安いモデルで約5万5千円と、5倍以上の価格差が発生している訳で、2つ同時に並べられて価格を言われたら、前者を選ぶ人も多そうです。

そもそも中国の強い所は、自国に14億の人口がおり、国内向けのみに商品を作っていてもビジネスが十分に成立するところにあります。さらに流通のグローバル化により、アジア全域で約45億人、世界全体で約74億人を市場として考えられるようになった(そして中国製品は価格においてそのポテンシャルがある)訳で、中国製品が世界で無双するのは自然なことなのです。

  

<中国の製造業が強い3つの理由 まとめ>
安い人件費に加え、そもそも中国には豊富な資源があるので、原材料を安く調達可能。
②世界の工場となる過程で欧米・日本企業から技術を吸収し、さらに技術投資を米国の次にやっている。
③価格競争力があり、品質も一定のレベルまで達したので、マーケットを世界中に取れる。

  

価格競争力がありすぎる故の中国の憂鬱


 さて、ここまでの分析で中国の製造業が強い理由は、ある程度わかりましたが、一方で、「何故模倣品がたくさん製造されるのか?」という疑問は解消されていません。素直に考えると、「世界最強の製造力」がある訳ですから、法を犯して模倣品を作る必要はないはずです。正々堂々と自社ブランドや自社技術の製品を売ればよいのに、なぜ模倣品業者が後を絶たないのでしょうか?

理由は複数考えられるのですが、私は一番大きな要因は「中国製品に価格競争力がありすぎるから」だと思います。・・・どういうことでしょうか?

先ほど、中国製品の市場における競争力は、「安い価格、それなりの品質」だと分析しましたが、ここで消費者が最も評価しているのは「価格」です。中国製品は、価格を武器にすることで、それほどブランド力がなく、他を圧倒するほどの技術力がなくても世界を席巻することができました。

しかし、これは即ち、「価格を上げたらすぐに売れなくなる」ということです。

”安くて、それなり”というイメージがついている中国製品が、価格を上げることはある意味、中国製品というブランド価値の否定であり、そこから抜け出そうと思った場合、自らのブランディングにおいて

「自社は中国企業ですが、他のノンブランドの製品や凡百の中国ブランドの製品とは違い、高い価格を支払うだけの付加価値がある」

ことを中国製品=低価格という先入観を覆して積極的に証明する必要があり、日本や欧米企業のブランディングよりも、ある意味ハードルが高いです。

もちろんこの価値の証明をきちんとやり、成功している中国ブランドも多数あるのですが、一方で資本力がなく、ブランディングの知識もない中小企業にとっては、簡単ではありません。

しかし、この差別化をやらないと競合する参入業者がどんどん入ってきて、泥沼の価格競争になってしまう・・・。

そこでどうするか?模倣品の出番です!

模倣品というのは、他人が築き上げたブランド価値や知的財産にフリーライドすることで簡単に利益を得ることができる手段です。中国製品はすでに一定の品質があり、量産体制もあります。しかし、「安かろう」というイメージがあるため、簡単に価格を上げることができない。価格が上げられなければ利益も上がらない・・・。

  

じゃあ、他人のブランドをコピーすれば良いじゃん!


例えばTシャツの場合、安いノンブランド品ならタオバオで8元(130円)ほどで買えますが、中国のUNICLOショップで買うと79元(1300円)となり、価格は約10倍です。これが欧米のブランドとなるとさらに高いでしょう。模倣品だとユーザーが分かって買う場合、さすがに正規品の価格は出さないでしょうから、10倍では売れないとしても、少なくとも元の価格の2~3倍では販売できる。

工場で普通に商品を作ったあと、最後にタグに他人のブランドロゴを付けるだけで、販売価格が倍以上に跳ね上がる・・・。これは正に現代の錬金術です。

自社で苦労してブランディングしても、とても販売価格がユニクロやアバクロ並みに引き上げられるとは思えない。であれば無理に努力をするよりも、バレない範囲で適当に人気ブランドのロゴを付けて、価格を引き上げて売った方が早い。 上代が上がれば流通も喜ぶし、ユーザーも普段は買えないブランド品の商品を身に着けている気分が味わえる!こんな図式で、模倣品は今日も今日とて、中国でガンガン生産されているのです。

中国国内のUNIQLOショップ(真正品!)

上記のとおり、「簡単に競争力を手に入れ、販売価格を引き上げる手段」として、中国では模倣品が活用されているわけですが、模倣品だということに悪意の業者だけとは限らず、そもそも侵害だと知らずに模倣品を製造・販売している業者も多いでしょう。

違法性の認識に関わらず、結局は

 「模倣品を作ることで得られる利益  > 模倣品を作ることのリスク」

の計算式があり、ここで利益がリスクを上回る限りは、模倣品業者は模倣を止めず、むしろ増える一方。

ならばリスクのほうが利益を上回る状況を作り、それを製造・販売業者に知らしめる。

中国で模倣品を減らすための活動は、これを地道にやっていくしかないのかなと思います。

・・・・次回は中国で模倣品が多い理由を考えるシリーズのラストとしまして、

3、「スマホで繋がる模倣品ビジネスの輪(流通・販売)」の側面を考えてみたく、よろしくお願い致します。

  


<ライター紹介>

協力ライター ちざたまご

都内メーカーの知財部に勤める文系弁理士。

主な担当業務は商標管理、侵害品対策。社内知財セミナーで睡眠者が1人も出ないように試行錯誤中。 良く行く中国模倣品街ではそろそろ顔が割れてそうで、覆面をかぶるべきか思案しているところ。

  

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