重要な知的財産として増加する、独特な力を秘めた「#」商標

ハッシュタグとは言葉やスペースの無いフレーズの前に「#(ハッシュ記号)」を付ける形のラベル。Facebookやインスタグラム、TwitterといったSNSに投稿したメッセージにおいて言葉やフレーズの前にハッシュタグを付けることで、同じタグ付きの投稿の情報収集ができるもの。

特に、近年の高校生以下の若い世代は検索エンジンではなく、タグで情報収集をする傾向にあると言います。また、ハッシュタグをキャンペーンで使用することで、消費者が気軽にその対象となるキャンペーンに参加することができ、企業側もその反応を簡単に集計することが可能。また、SNSでの使用の域を超え、テレビコマーシャルに使用する企業もあり、今、ハッシュタッグは、ブランディングや顧客エンゲージメントのために重要なマーケティングツールとなりつつあるのです。

「#」商標の様々な活用と戦略

日本の商標データベースであるJ-PlatPatで、「#」から始まる出願商標を確認したところ、111件の商標が確認でき、出願年で見た出願件数の遷移は下記通り。Instagramの登場により「#」の検索数が増加したのが2014年以降。これと同時期に商標の出願件数が増加していることがわかります。

より多くの拡散を狙ったキャンペーン

「#SayItWithPepsi」は、ペプシコ社から11件出願されている商標。出願先国は日本、フィリピン、アルジェリア、マレーシア、EM、オーストラリア、カナダ、アメリカ、ヨルダン、韓国、シンガポールと多岐に渡ります。Instagramの投稿数は16,128件あり、ペプシコ社からの投稿や個人ユーザーの投稿などペプシコーラが含まれる画像の投稿が多く確認できます

「世界絵文字デー」で大々的な取り組みを見せたのがこのキャンペーン。ブランドオリジナルのemojiボトルやemojiのキーボードアプリをローンチし、キャンペーンハッシュタグと同文字列のサイトsayitwithpepsi.caが立ち上げられています。

画像出典:http://www.sayitwithpepsi.ca/

長年に渡りテレビに大きな予算を投じてきたペプシコ社ですが、いまでは投資の40%近くがデジタルへの投資へ移行。2016年のアメリカ合衆国のアメリカンフットボールリーグであるスーパーボウルでは、デジタルのリアルタイムキャンペーンにも力を入れたことで話題となりました。こうした移行は、従来型メディアと新メディアをうまくミックスしているペプシコ社全体のマーケティングアプローチを反映したもの。

ペプシコ社は、ハッシュタグを活用することで、ユーザーの反応を検知していることが伺えます。また、キャンペーン内容自体が、より多くのSNSへの拡散を狙った内容であり、消費者が「#SayItWithPepsi」を多くの投稿することで、情報拡散による宣伝を狙った戦略。また、商標出願だけでなく、同文字列のドメイン取得とサイトの運営は流石大企業といった印象ではないでしょうか。

シンプルなパッケージに「#」で伝えるメッセージ

「#teampixel」は、Google社から7件出願されている商標。出願先国は日本、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、ノルウェー、インド、韓国、EM、中国、カナダ、アメリカと多岐に渡ります。また、出願区分は下記通り。Instagramの投稿数は600,981件あり、様々な画像の投稿が確認できます。

9類:
 携帯電話機,スマートフォン
35類:
 マーケティングコミュニケーションの手段、すなわちソーシャルメディア・インターネットマーケティング並びに共有可能な又は口コミの通信チャネルによる広告及びマーケティング

”pixel”とは、アメリカのGoogleによって開発されたスマートフォン。「teampixel」とは、そのスマートフォンを使用して撮影をした写真を投稿する人々を表す名称で使われています。2017年10月、Google純正のハイエンドスマートフォン「Google Pixel」の第2世代目となる「Google Pixel 2」および「Google Pixel 2 XL」が発表されました。カメラ性能をスコア化してランキング形式で公表している「DxOMark」によると、Google Pixel 2のスコアは驚異の「98」。これは、史上最高峰のスマートフォンカメラを搭載しているということになります。

Pixel 2が入っている箱の底面は緑一色に「#teampixel」というハッシュタグが入っています。

画像出典:https://gigazine.net/news/20171102-google-pixel-2-review/

パッケージに印字されたのは「#teampixel」とGoogleのロゴのみですが、「このハッシュタグを利用してSNSで投稿してください」というメッセージ力を感じます。「#teampixel」タグで投稿してもらうことで、史上最高峰のスマートフォンカメラの商品力の宣伝・拡散を狙った戦略。

一方、teampixel.comは下記サイトが権利者不明の状態で立ち上がっているのが気になるところ。今後、Google社の「#teampixel」における展開に注目です。

画像出典:http://teampixel.com/

「#」で結束力を強固なものに

「#TOGETHER」は、シティ・フットボール・グループ(City Football Group Limited)から3件出願されている商標。シティ・フットボール・グループ は、マンチェスター・シティFC、ニューヨーク・シティFC、メルボルン・シティFC、の3クラブを傘下に持ち、横浜F・マリノスの少数株主でもある、世界的なサッカー事業グループ。また、出願区分は下記通り。

41類:
スポーツの興行の企画・運営又は開催,スポーツに関する教育,スポーツに関する訓練,スポーツに関する教育,スポーツの指導,スポーツクラブの提供,フットボールに関する教育及び指導,フットボールの分野における指導,フットボールゲームの運営・手配及び実施,サッカーの分野におけるスポーツイベントの企画・運営,フットボールの競技場の提供,フットボールに関するスポーツ施設の提供,教育・文化・娯楽又はフットボールに関係するスポーツの分野におけるビデオテープフィルムの制作(映画・テレビジョンの番組及び広告の制作を除く。),前述の全ての役務に関連する情報の提供及び助言

下記、マンチェスター・シティFCのWEBサイトでは「#Together」の写真と共に、“一緒に遊び、戦い、勝利しよう”というコンセプトや、一緒に優勝へ進もうという熱いメッセージが記載されています。
画像出典:https://www.mancity.com/news/club-news/club-news/archive/2012/march/together-with-manchester-city

FCに所属する人気選手や監督がSNSで「#Together」タグを使用していることも確認でき、チームとファンの結束力を強固なものにすることに一役買っている存在。

”Together”は一般名称ですので、Instagramの投稿数は18,379,934件と膨大な件数あり、幅広い分野の投稿の中からサッカー関連の投稿を探すことは簡単な作業ではありません。また、「#Together」専用のサイトなども確認できないことから、「#Together」は、企業のマーケティングに活用することが目的というよりかは、チームとファンの結束力強固なものにするための、大切なスローガンと言った立ち位置。そして、そこで築かれた結束力はマーケティング戦略へつながるものとなることが考えられます。

「#Together」と「Together」。ハッシュタグが付いているかいないかだけの違いですが、前者の方がメッセージ力が強いように感じるのは私だけでしょうか。私たち消費者が気付かぬ間に築かれた「#」のイメージを有効的に活用した事例ではないでしょうか。

ハッシュタグ商標の持つ独特な力

ハッシュタッグ商標を権利化することで、利用を独占したいという気持ちよりかは、消費者に積極的に使用してもらうことで商品やサービスを宣伝してほしいという気持ちが強いことにも、「#」の独特な力が秘められていることを感じます。(もちろん、ブランドのイメージを傷つけるような利用の仕方でない限りではありますが)

「#」の後ろに続く文字列が一般名称である場合は、消費者のSNSでの反応はキャッチしにくいですが、元々の言葉が持つメッセージ力を有効的に活用できること。また、ユニークな文字列の場合は、商標出願のみではなく、ドメインネーム取得についての検討も必要であること。がわかりました。

「#」商標の様々な活用方法や企業の思いが垣間見れたのではないでしょうか。

 

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